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【第2回】日立製作所の事業ポートフォリオ転換とグローバル戦略
【第4回】日立製作所の変革から学ぶ経営の本質
目次
日立はなぜ「復活企業」と呼ばれるようになったのか
日立の変革を貫く「一本の軸」
戦略だけでは企業は変わらない、という現実
日立の変革が示す「全体最適」という考え方
日立の変革が「他社でも応用可能」な理由
この分析にMBAの学びはどう活きるのか?
ビジネスパーソンへの3つの問い
終わりに──変革は「一部の天才経営者」の仕事ではない
日立製作所は、かつて「典型的な総合電機メーカーの失敗例」と語られることも少なくありませんでした。事業は広がりすぎ、収益性は低迷し、意思決定は遅い。リーマンショック前後には最終赤字に転落し、「この巨大企業は本当に立て直せるのか」という疑問が広く共有されていました。
しかし現在、日立は「日本企業の中でも最も変革に成功した企業の一つ」として評価されています。この評価は、単に業績が回復したからではありません。
重要なのは、事業・組織・人材・ガバナンスが一貫した思想のもとで再設計されたことにあります。
本最終回では、これまでの3回を俯瞰しながら、日立の変革がなぜ“再現性のある経営ストーリー”として読み解けるのかを整理していきます。
日立の変革を一言で表すならば、それは 「選択と集中を、徹底的にやり切った」 ことです。
第1回で見たように、日立はもともと、
・電力・鉄道・IT
・家電・半導体・ディスプレイ
・金融・建設機械
と、ほぼあらゆる領域に事業を広げていました。これは高度成長期には強みでしたが、成熟市場ではむしろ足かせになります。
そこで日立は、「自分たちは何の会社なのか」という問いを、極めて厳しく突き詰めました。その答えが、「社会イノベーション事業に集中する」という戦略です。
重要なのは、これはスローガンではなく、
事業売却・撤退・M&Aという痛みを伴う意思決定を通じて実行された
という点です。
ただし、日立の本当の凄さは「正しい戦略を描いたこと」ではありません。第2回・第3回で見た通り、日立は早い段階で次の事実に直面します。戦略を変えても、組織と人が変わらなければ実行されない、これは多くの企業変革が失敗する最大の理由です。
日立はここで、
・ジョブ型人事への転換
・外部・グローバル人材の登用
・取締役会を中心としたガバナンス改革
といった、極めて実務的で難易度の高い領域に踏み込みました。
特に重要なのは、
・人材を「守る対象」ではなく「戦略資源」として再定義したこと
・評価・報酬・役割を戦略と連動させたこと
です。
これは、日本企業にとって心理的ハードルが高い改革ですが、日立は「やらなければ戦略が空回りする」という現実を直視しました。
日立の変革を理解するうえで欠かせないのが、部分最適ではなく、全体最適で設計されているという点です。
例えば、
・事業ポートフォリオの再編
・グローバルM&A
・人事制度改革
・ガバナンス刷新
これらは個別に見ると、どこかで見た施策にも見えます。しかし日立の場合、それぞれが独立して存在していない。すべてが、「社会イノベーション事業で成長するために何が必要か」という問いから逆算されています。
MBAで言えば、戦略・組織・人材・財務を一つのシステムとして設計する発想が、極めて高いレベルで実装されているのです。
ここで多くの読者がこう思うかもしれません。「日立だからできたのでは?」しかし、日立の事例が示しているのは規模の問題ではなく、思考の問題です。
日立が行ったのは、
・自社の強みを冷静に再定義する
・捨てる事業を決める
・その戦略に合う組織と人材を設計する
という、極めて基本的で、しかし実行が難しい経営判断です。
これは、
・中堅企業
・スタートアップ
・さらには部門・チーム単位
でも、スケールを落とせば同じ構造で考えることができます。
日立製作所の変革は、MBAで学ぶ複数の論点を一本につなぎます。
| MBAの論点 | 日立の変革から得られる示唆 |
|---|---|
| 経営戦略論 | コア事業定義と選択と集中の実行 |
| ポートフォリオ戦略 | 事業売却・M&Aを含む資源配分 |
| 組織デザイン | 戦略に適合する組織・権限設計 |
| 人材戦略 | ジョブ型による専門性と流動性 |
| ガバナンス | 監督機能の強化と意思決定の質 |
| 変革マネジメント | 抵抗を前提とした長期視点 |
特に重要なのは、「MBAの知識は個別ではなく、統合して使うものだ」という点を、日立の事例が雄弁に語っていることです。
日立の変革は、私たち一人ひとりにも問いを投げかけます。
自分の組織は、何に集中すべきなのか
・その戦略に、組織や評価制度は本当に合っているのか
・「変わらない理由」を、都合よく正当化していないか
これらの問いに向き合うこと自体が、MBA的思考のトレーニングとも言えます。
日立製作所の復活は、カリスマ経営者の一発逆転ではありません。むしろ、考え、設計し、実行し続けた結果です。変革とは、派手な一手ではなく、一貫した意思決定の積み重ねである。日立の歩みは、そのことを静かに、しかし強く教えてくれます。
次回は、また別の業界・企業の事例を取り上げていく予定です。あなた自身の現場と重ねながら、引き続き一緒に考えていきましょう。
ここまで読み進めてくださった方は、
すでに「自分のキャリアや組織にどう活かすか」を
考え始めているのではないでしょうか。
MBAが本当に自分に必要か、
どのタイミングで、どう活かすべきか。
それは人によって答えが異なります。